彬義ワールド 公園 大人篇40
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2016.12/03 (Sat)

公園 大人篇40

Part.40

廊下も畳敷きの日本家屋は、仕立て屋として機能的な間取りだ。
廊下が広く布地を運ぶのに導線が良く都合がいい。

護は日本家屋を心底珍しそうに瞳を輝かせている。
視線を四方にさまよわせ何度も巡らせる。
「畳だ。廊下に畳?」
護がめずらしそうに足元を見る。
「廊下は板張りが多いが、高級感を出すのに昔から畳廊下はある」
加賀も贅沢な家屋だと思うが、護ほどの驚きはない。
「そうなん?‥ぁ絨毯敷いた廊下みたいなもんや」
護は靴を脱ぎ畳を踏みしめる。
絨毯とはちがう独特な感触を足裏で確認する。
「布地を扱うのに、畳廊下は便利なんで移り住む時に、この家屋の決め手になりました」
「そうですか」
加賀は如才なく応える。

畳廊下を奥に案内され、部屋に通された。
「どうぞ」
渋い銀地の襖を開き、深川が2人を通す。

部屋の半分に5人用の応接セットが設置されている。
席に落ち着くと、若い男が珈琲を運んできた。
雰囲気が似ている。
接客に慣れた動作で珈琲が出された。

加賀は珈琲に手をつけず、単刀直入に話し出した。
淡々と既製品のレプリカを作る手間をかけさせたことの感謝。
それについてのクオリティの高さへの惜しみない賛辞と敬意を表す。
真実を伝えるのに、気負いも衒いもいらない。

裏のない誉め言葉に深川は相好を崩した。
「この年になり、店は跡取りに任せ、半ば引退の身。
時間に余裕があるからの洒落心なかなかどうして勉強になりました。」
悪びれもせず、大人の悪戯に深川は呵々大笑する。

矢張りなと加賀も苦笑するしかない。
加賀はオーダーの良さを認め、出せる予算をズバリと伝えた。
その範囲で仕立てられるスーツを依頼する。

「喜んでお引き受け致します。」
深川は真摯な態度で承諾する。
「それでは、まずは採寸致しましょう。」
飲み物を運び、後ろに控えていた弟子に指示をする。
「末息子の隆司です。」
紹介し、採寸の指示をする。

採寸と聞き、加賀が立ち上がろうとすると、止められる。
加賀が長身故に、座った状態で計っておきたい点があると言う。
加賀は細かな採寸に感嘆する。
言われるままに動いてオーダー用の採寸を受けた。

護は紙とペンを借り、書き物を始めている。
熱中している様を見て、加賀は護の服の仕立てはこちらかと確認する。
深川は加賀の真意を読み取った応えをする。
「デザインが来て私がお作りすることもございますが。彼の場合はお仕着せも多うございます。」
深川は丁寧に答える。

お仕着せ?聞き慣れぬ言葉に加賀は怪訝な顔をする。
「そうそう。いずれわかるだろうと用意していたスーツがあった。
 仮縫いができるのは幸いだ。隆司」
深川が声をかけると隆司は頷く。

隣の部屋から、スーツの入った箱を運んでくる。

「これは私からのお詫びと思うてください」
「手間をかけさせた上、お詫びされる言われはない」
「お心が広い方で良かった」
深川は人の好い笑顔を浮かべる。

12/23






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