彬義ワールド 公園 大人篇19
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2016.11/15 (Tue)

公園 大人篇19

Part.19

加賀はロビーの出口まで護に送られ、外へ出た。
いつもなら通勤に片道四十分はかかる。
ここからだと徒歩一~二分だ。

歩き出して、はたと昨日が無断早退になってると気づく。
電話一本入れようと思っていたのに、いつの間にか木乃伊取りが木乃伊になって朝まで起きなかった。
あんな寝心地の好いベッドで眠れないとは相当難儀なものだと加賀は冷静に思う。

どこまで正直に説明したものか、なんとも面倒だなと思う。
完全に黙秘しようにも無理だ。
衆人環視な状況で人一人抱き運んでいる。
誰も目撃者がいないと脳天気に決め込めるほど加賀は愚かじゃない。

社内の顔見知りと挨拶を交わしつつ、エレベーターで加賀の席がある階まで上がる。
フロアに入ると、土田課長が加賀を手招いた。
加賀は課長の机の前に立つ。
「昨日は大変だったな。」
課長からねぎらいの言葉が発された。
「はい」
世間的に良いことで、会社にとって都合の悪いこともある。
加賀は注意深く直属の上司の言葉の先を聞く。
「人助けは、良いことだからな。」
土田課長は具合の悪い人を助けたと思っている。
やはり何人か会社の者にも目撃されていたのだろう。
そうなれば、人の口に戸は立てられぬ。
加賀の想定内であり、平然としていた。
高、大とラグビーをしていた加賀は大の大人でも暑さ寒さや当たり所で、簡単に気絶することがあると理解してるし、介抱も心得ている。

大きな問題にならなかったが。
昼休み前の恩恵は他の誰かに回されると思っていた。

時間になると土田課長に加賀は呼ばれた。
「急ぐと連絡が来た。いつもの書類だ。届けたら、昼にしていいから。」
土田課長は加賀に書類を手渡した。
封筒の部署名と名前を確認して受け取る。
金融機関らしく朱肉の捺印が必要な書類も多く、こういうお使いは意外に減らない。
書類を階下の担当者に手渡し、加賀は一階に降りる。

ソファに座った護は圧倒的な存在を放っていた。
一夜の眠りが護の不安を払拭したのか、玲瓏な空気を纏い、迂闊に声をかけられる感じではない。
加賀も躊躇する。
エレベーターの扉が開き、目立つ護に真っ先に加賀の視線が走った。
見た印象を判断するのは一瞬だ。

エレベーターからの人の流れに護が視線を走らせる。
あっという間だ。
護はたちまち人懐っこい笑顔になる。
これもこれで護が見ている相手にしか向けてないと明瞭だ。
護の視線を追い、加賀にも視線が飛んでくる。

護はぴたりと加賀に身を寄せてくる。
背に頬を当てて深呼吸する。
そのあたりがほんのりと温かくなる。
「ああ、落ち着くわ」
護は頼り切った表情で加賀を流し見る。
加賀は報われた気分で口角を引き上げ小さく微笑む。
加賀は歩を緩めず護と連れ立って歩いた。
11/20


11/15元ブログ
さてどれ
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