彬義ワールド 公園  大人編12
2017-08-/ 07-<< 12345678910111213141516171819202122232425262728293031>>09-
2016.11/10 (Thu)

公園  大人編12

Part.12

加賀と小さく手を振り別れた護は振り返らなかった。
足早に歩き出す。
振り返れば、追いかけて会社に行くなと加賀に我が儘を言ってしまいそうだ。
縋りついて懇願して、寝床に引き摺っていきたい。
そして加賀の枕でゆっくり眠りたい。
そんな欲望が頭を擡げるが、それは叶わぬことだ。

護には、やらなければならないことが山積みしていた。
加賀を無理に連れて来たところで護に休める時間がない。

天才肌の護は理論が苦手だ。
なかなか頭に入って来ない。
それを何十度と頭が爆発しそうになりながら自分のものにすれば応用が利いて便利だ。
頭で、それがわかっても覚えるにはいろいろと抵抗があった。

嘆息し憂い顔の護をすれ違いに気付いた人が心配そうに見やる。
護は時に通行人と目が合っても、表情を変えず、冴えた瞳を向ける。
その瞳に気圧され、人は一様に時間差が合っても結局見なかった素振りをする。
それすらもシカトして護は歩いていた。
興味がもてないものに注意がどうしても払えない。
移動の為に見て歩いているが、頭の大半は思考に占拠されている。
芸術家特有の思考は違う次元に居ることが多い。
それが難関で、今は地獄を見る思いで護は難儀している。

スタジオでいくつか課題を片付けたら、大学に個人講義を受けにいかないとならない。

護が探し当て師事した教授は護に教えられるのは年の功だと老獪に笑う。
おまえさんの年頃に儂がおれば、儂ももっと上を目指せたろうと平然と嘯いた。
休む間もなくレベルを引き上げられ、頭が煮えて限界がくる。
思わず逆らい食ってかかる護をいなしてこの幸せ者がと云い、教授はカカッと哄笑する。

激高は刹那的で、護も正気に戻れば反省し、謝罪もするが。
教授は才能を見抜き、厳しく指導している自身の所業を理解してもいた。

感覚が常人より繊細だからこその天才肌はかんしゃく持ちと決まっている。
かんしゃく中は、相手にせぬから、気が済むまで、好きなだけ暴れなさい。
感情の嵐のようなものだから、最中は相手にせぬが。
気が済もうと済まなくとも、スケジュールで決められた講義は休まないこと。
かんしゃくによる休みは絶対に認めない。
護は初めての激高の後、教授にそう厳命されていた。

加賀に出逢う前は、その約束が本当につらかった。
歯噛みして、その時は本当に苦しくて仕方がないが。
喉元過ぎれば行っておいて良かった。
不思議とそういうことに落ち着いた。

学生だとめったにおまえさんクラスはおらぬが、居ても時間的余裕がなく、こうきちんと面倒がみられん。
個人教授契約の弟子だから特別だ。
そう言って山積みの楽譜を護に手渡す。
学びに果てはない。

護は唇を引き締め、スタジオに戻った。





11/10
増えたっていい、増やすもん
スポンサーサイト
06:30  |  NOVEL  CM用  転載禁止  |  TB(0)  |  EDIT  |  Top↑

Trackback

この記事のトラックバック URL

→http://ryugugi.blog.fc2.com/tb.php/561-18bc8946
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

この記事へのトラックバック:

▲PageTop

 | ホーム |